世界遺産と観光誘致を結びつけることに反対!屋久島と白神山地の違いから考える。

  • 2013年11月19日
  • yakusugi shirakami

    ★観光に沸く「屋久島」、細る「白神山地」

    鹿児島県の屋久島と、青森県と秋田県にまたがる白神山地が、日本で初めて世界自然遺産に登録されて20年になります。
    屋久島に訪れる観光客は、登録当初に比べて5割アップの年30万人となり、観光の島として一変しました。
    一方、白神山地を訪れる観光客は、年々減り続けています。20年の節目の年に、この2つの世界遺産は対照的な状態にあるのです。

    屋久島と白神山地には、大きな違いがあります。その地に人が関わっているか否かです。

    屋久島では、「岳参り」という山岳信仰が受け継がれていて、春と秋に各集落の男性が十数人単位で山頂をお参りする風習があります。よって、登山道は整備されているのです。
    また、世界遺産登録前から、登録地域が、人の生活の一部になっていたことから、バス路線や林道もあったのでした。
    生活に根ざした道は、登録後も使えたので、このインフラが観光ルートに生きているという訳なのです。

    一方、白神山地の中心は、もともと人が入ることもなかったような地域でした。
    当然、整備された道はなく、ガイドがいなければ行けないような場所で、しかもクマに遭遇する危険すらあるのでした。登録地域内は、人の手を加えず、自然を保全することが基本原則なので、観光用のインフラ整備は難しい問題なのです。

    また、交通アクセスにも大きな違いがあります。屋久島は、島と結ぶ交通網が充実しています。航空路線は、鹿児島、福岡、大阪の3路線があります。島と鹿児島を結ぶ高速船は、毎日6便運航しています。
    一方、白神山地は、世界遺産の登録地域へ行く場合、青森駅から3時間以上もかかります。

    このように、交通アクセスも困難で、現地地域内でのインフラ整備もないような「白神山地」は、観光客が少なくなってもしようがないと思わざるとえません。

    私は、世界遺産登録=観光誘致=観光収入アップという考え方に反対です。
    屋久島はたまたま、人の生活がそこにあったから、観光に結びついているだけで、「ラッキー」だったということです。
    手つかずの自然に人が入れば、自然は壊れていきます。

    白神山地に観光客が減っているのは、むしろいい方向だと思います。

    旅行会社も、白神山地のツアー造成は、大量集客型安価な商品でなく、少数こだわり型の高額商品に進んだ方がいいと思います。

    20年の節目の年に、キャンペーンやイベントで、集客するのはやめましょう。



    (日経/2013年11月18日号「地域総合」)


    kyo_no_kando まとめ(今日の販促ポイント!)

    私は、白神山地には、青森ルートから暗門の滝、日本海ルートから青池、十二湖を見に行ったことがあります。
    それぞれ観光的な魅力が低かったと記憶しています。無理に滝や池をクローズアップしない方がいいと思います。
    白神山地の魅力は、滝とか池、湖といった、観光の対象物ではなく、山や森や林そのものなので、これが「白神山地」と言えるものがないのが魅力なのでしょう。
    ですから、一般の観光客には受け入れられない場所なのではないでしょうか。
    白神山地は、世界遺産に登録されて日の目を見たものの、世界遺産の基本原則によって、観光客からの自然破壊から守られているのでしょう。

     

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